遺言を作るなら必ず知っておきたい、遺留分に関する5つの基礎知識
「遺言を作る時、気を付ける点ってなんだろう?」
大変な思いをして自分が作り上げてきた財産。遺言書を作るなら自分の思い通りに分けたいですよね。しかし、自分の思いだけで作ってしまうと、逆に争いの火種になってしまうかもしれませんよ。
この記事では、遺言書を作る時に気を付けたい遺留分についてご説明します。
遺留分とは
遺留分(いりゅうぶん)とは一定の法定相続人に最低限保障されている相続財産(遺産)の持分のことです。遺産は自分の財産なので、遺言書によって自由にその相続させる人や金額、処分方法が決められそうですが、相続の際は一定の制限があります。この一定の制限が遺留分なのです。
遺留分の基礎知識
遺留分を尊重しながら遺言書を作ろうとしても、遺留分の基本が分からないとせっかくの遺言書も台無しになってしまいます。そこで、まずは知っておきたい遺留分の基礎知識を5つご説明します。
知識1 遺留分を請求できる権利を持っている人は決まっている
遺留分を請求できる人は決まっています。それは配偶者、子(代襲相続人・非嫡出子も含む)、直系尊属です。つまり法定相続人のうち兄弟姉妹には遺留分が認められていないのです。
遺言書を作る際は、まず相続人になる予定の方を確認し、その方が遺留分を請求できる人なのか判断しましょう。相続人が兄弟姉妹のみであれば遺留分を気にすることなく遺言書が作れます。
知識2 遺留分を請求するか・しないかは相続人の自由
遺留分を請求できる相続人であっても、必ず請求してくるわけではありません。遺留分を請求するか、しないかは相続人の自由なのです。ですので遺言書で遺留分を侵害した遺産の振り分けをしたとしても、遺留分の請求がなければ遺言書の内容がそのまま反映されます。
遺言書を作る際は、残される相続人同士が仲が良いのか、お金に困っている相続人はいないかなどの相続人の状況にも配慮しながら作成しましょう。そして必要であれば、家族会議などを開き自分が遺産をこのように残したい理由を話すのも手でしょう。
知識3 遺留分の割合はこちら
遺留分の割合は下記の表のとおりです。では例示として計算してみましょう。
法定相続人が配偶者と子供2名の場合で、相続財産が1000万円とします。この時の配偶者の遺留分は1/4ですので、1000万円×1/4=250万円となり、子供1名当たりの遺留分は1000万円×1/4÷2=125万円です。
この金額が、最低限保障されている相続財産(遺産)の持分となります。
法定相続人 | 遺留分の割合 | 個別の遺留分の割合 |
---|---|---|
配偶者のみ | 相続財産の1/2 | 配偶者:1/2 |
配偶者と子 | 相続財産の1/2 | 配偶者:1/4 子:1/4を人数で分ける |
配偶者と直系尊属 | 相続財産の1/2 | 配偶者:1/3 直系尊属:1/6を人数で分ける |
配偶者と兄弟姉妹 | 相続財産の1/2 | 配偶者:1/2 兄弟姉妹:遺留分なし |
子のみ | 相続財産の1/2 | 子:1/2を人数で分ける |
直系尊属のみ | 相続財産の1/3 | 直系尊属:1/3を人数で分ける |
兄弟姉妹のみ | 遺留分無し | 遺留分無し |
知識4 遺言者であっても勝手に遺留分を奪えない
例え遺産を残す遺言者であっても、遺言書に「相続人に遺留分を与えない」と書いたからといって相続人の遺留分を勝手に奪うことは出来ません。それは遺留分の制度が、相続人に最低限の遺産を相続させる権利を与えることを目的としているからです。
実は、「遺留分の放棄」という制度もありますが、この遺留分の放棄も放棄をするか、しないかは遺留分を請求できる人の自由なので、強制することは出来ません。
知識5 遺留分の請求には時効がある
遺留分は相続の開始及び遺留分が侵害されたことを知った日から1年、もしくは相続の開始のときから10年で時効となります。しかしその期間は遺留分を請求される可能性があるのです。そのため出来るだけ遺留分に配慮した遺言書にすることが重要です。
まとめ
遺言書を書く時、自分の財産だから自由に分配先を決めたいと思うでしょうが、遺留分への配慮は欠かせません。遺留分を請求するか否かは、相続人の判断なので請求されるとは限りませんが、遺留分の請求がされた場合は、相続人間で争いが生じてしまいます。そうなると相続人同士の関係性も悪くなってしまい、せっかくの遺言書が争いの火種になってしますのです。そのため、遺留分の請求が起こらないようなに遺言書を作成することが重要です。